音楽展

ブログです。見れば分かりそうなもんだ。

少女性

僕の通う通信高校、そこでは誰もが場面緘黙症。自信なさげに座っている。親の金でここに居る…という事実、それから逃れることは神に祈っても無理。

死ぬまで無垢、死ぬまで少女。なんにも知らないで笑っている顔が手に入るのは、いつになるでしょうか。ただ可愛いだけの女の子が居たら、ただ高潔なだけの男の子が居たら、世界は平和になりそう。とりあえず僕の世界は平和になりそう。

しかし、考えなければ囚われることもない。故に、群れる不良は大声で無知を晒す、恥晒し。しかし我が身も同じ穴の貉。声がでかくて怖い。群れるヤツに対する軽蔑と、そんな見下す姿勢とは別に感じる恐怖とは切っても切り離せない。先生はそんな未来のない愚か者を叱らなければならない立場だが、そもそも本校に外部から雇われているだけの派遣先生、強くは言えない。派遣ごときが面倒ごとを起こすわけにはいかない。不良は頭が悪いから言葉が分からない、だから忠告も聞き入れずに騒ぐ。五月蠅いぞ、授業妨害せし反逆者共。即刻退室命令を!!なぜか待てども出ない。僕は本物の白痴より、彼らを心の底より蔑如致します。しかし、まぁ、そんな連中も時間が過ぎればどうでもいい。

 

嫌なのは生徒だけでない。我こそ生徒に好かれるべき恩師だ!!という心の声が聞こえてくるような授業。先生にも当たりと外れがある。前述の愚か者たちに取り入って、やたらと自分の人生、思想を語る。めくらめっぽう。興味のない思想ほど鬱陶しいものはない。もはや撒き散らす公害。そんな革命家の授業を4時間も受ける苦痛。即刻退室命令を!!なぜか待てども出ない。心の底より蔑如致します。しかし、まぁ、時間が過ぎればどうでもいい。

 

先日、コミュニケーションの授業を受けた。学校を出た後の進路が社会性の欠如によって閉ざされている者達の必修科目。その授業でゲームをした。A・B・Cグループに分かれ、それぞれ赤と黒の札を挙げる。もちろん旗上げではない。以下、ルール。

 

  • Aが黒を挙げ、Bが黒を挙げれば、両チーム+3点。
  • Aが黒を挙げ、Bが赤を挙げれば、Aは-5点・Bは+5点。
  • Aが赤を挙げ、Bが赤を挙げれば、両チーム-3点。
  • これをA・B・Cの各チーム毎に7回戦やって、得点が多いチームの優勝。
  • 3回戦は得点が2倍、7回戦は3倍になる。

 

勝負の順番は、AvsB→BvsC→AvsCとなった。

我がAチームは4人。僕、僕と同じ分校出身のN氏、見知らぬ女子2人。勝負が開始し、どちらの札を挙げるかを相談する時間が到来したが、残念ながら会話は始まらなかった。お見合いであった。ご趣味は?と聞きたいくらいであったが、なにも始まらないのは流石に辛いのでとりあえず声を出す。

 

僕「あー、赤と黒の時ってどうなんだっけ?」

 

N「赤が+5で黒が-5。」

 

N氏、少し間を置いて返答してくれる。笑顔。緊張が少し和らぐ。正直、返答が返ってこないことも覚悟していた。ありがとう、同胞よ。僕は「あ、そっか。」と、満足げに言う。ここで会話が終わり…いかん、なにか続けなければ。女子2人は会話を始める気配なし。コミュニケーションとは斯くも難しい。

 

N「多数決にしようか?」

 

ああ、コイツ天才だ。喋らずとも指で示せばOKの方法。コミュニケーションと言えるのかは甚だ疑問ではある小学生のようなやり方だが、しかし正攻法だ。手前には思いつかなかった。N氏こそ1級の軍師…いや言い過ぎた、そこまで思ってない。なにはともあれ、我々は指を指す。確か黒?だったような。忘れた。時間になり、Bも颯爽と札を挙げる。

黒。両チームとも+3、平和的なり。

 

そして、この後の詳しい結果などはもう覚えていない。しかしN氏のおかげで楽しめたのは確かだ。まあ断片だけ書き記すとしよう。というか、僕の書きたかった所だけ書こう。

 

4回戦目(5回戦目だったかも?)が終わり、時間割の都合上で休憩時間に入る。N氏と左前の女子がトイレに行く中、僕は密かに勝ち方を考えていた。そこでようやく気付いたのだが、このゲームには黒を出すメリットがないのでは?ということ。

黒のリターンは+3or-5。対して、赤のリターンは-3or+5。単純に考えれば、黒より赤が強いのだ。損がない。2人が居なかったので、隣の女子にこの考えを伝えてみる。すると彼女はこう返答した。

 

女子「黒を出すとーーーーだし、赤ならーーーーーーーで…えっと、そこに駆け引きが、あるんじゃないかな?」

 

僕は彼女のか細い声を聞き取れなかった。しかし、なにやら駆け引きがあるらしいことは分かった。ん?あるのか?なんだ駆け引きとは。僕の言ったこと、伝わったのだろうか。ちなみに聞き返す勇気はない。彼女に怖がられるのもやだもん。そうこうしているとN氏が帰還。僕の展開する理論を要領よく浚って言った。

 

N「じゃあ次は黒出してみようか。」

 

僕「!?あ、あー…?」

 

なんで?しかし皆さん黒を出したいらしい。僕には分からないなにかが、皆さんには恐らく見えている。どういうことだか理屈は微塵も分からないが

 

僕「…じゃあ出してみるか。」

 

という、浅ましき嘘。分かったふり。考える時間が足りない。なんで黒?赤あかあ書かかあkk…だが、もっと分からないことがある。それはお相手のBも黒を出したことだ。なぜそこで黒っ!?ふふ、人間不信。いいえ、ケフィアです。この段階でAとBの得点は…忘れたが、結構僅差だった。

 

先生「AとBは…まだ〘どちらも+になれる〙かもね…?」

 

先生の言葉。ああ、なんだ…そういうことか。つまり信頼関係。上手くやれと、そう言ってるんだなアンタ。か細い声の隣の女子も、沈黙せし左前の女子も、賢者N氏も、お前たちは聡いな。僕は今やっと意図が理解できた。ふーん、そういうのか。へぇ。でもでも、得点取らないと勝てないんでしょ?だったらさぁ、やっぱ赤一択っつーか?…でも次7戦目だし、なんかもう和解して平和的に終わる感じじゃん。後味悪くなるし黒出すか。

 

N「でも…裏切られるかもしれへんw」

 

僕「もう今更ねーっしょ!ここまで来たら黒一択よ!」

 

こうして最後、見事AとBは黒を出し合った。でも最終的にはAの方が点数が多かった。どっちにしろAとBの間には若干の不満が残ったが、

 

先生「Bはどうだった?」

 

Bの男子「Aとは途中まで駆け引きがあったんですよ。最後に裏切るっていうことも考えたんですけどね…」

 

僕には序盤も中盤も駆け引きなんかなかったぞ。つーかなに裏切ろうとしてんだよ人でなしか?

 

Bの男子「まあ結局は黒出しましたね。」

 

えらい。

ちなみにCのことは忘れたように一切話に出さなかったが、普通にずっと赤を出していた。2回戦目はなかったが、もしあったらCには赤しか出さなかっただろう。Bとは緩くて温い友情があるので、黒で乳繰り合って仲良くやっていくだろう。

 

先生「赤しか出さない人には赤しか寄ってこないけれど、黒をだす人には安心して黒が寄ってきてくれるんですよ。そこがコミュニケーションの大事なところです。」

 

相手を安心させよ、ということのようだ。

大丈夫だ、僕は読者の味方だ。気安く話しかけてくれて構わない。ただし一度でも赤を出してみろ、どうなるか分かってるだろうな?僕はお前と培った幸せな記憶を思い出して毎晩涙を流すだろう。どうして裏切ったの?って。まあでも、僕が先に赤を出したに決まってる!!って考えに至るだろうな。

 

大事な部分を纏めると、こういうことになる。

 

女子「黒を出すとーーーーだし、赤ならーーーーーーーで…えっと、そこに駆け引きが、あるんじゃないかな?」

 

あの子は可愛かった。久しぶりに女子と話せてよかった(きんもー☆)。ありがとね。